CALAMARI CALAMATTE

佐野まいけるの日記

だいたい3日間日記:幸せな生前葬、イカの死体を隠す

日曜の夜は、取材される友人に縁のある人々が集まり、美味しいごはんを食べながら友人とのエピソードを順に話していくという会に参加してきた。友人のお父さんや師匠や幼馴染などが集まっていて、なんだか幸せな生前葬みたいだな、と思った。私も話したいことはたくさんあったのだが、口元ですべて消失していったので、あとで文章でまとめて送ることにした。話すのが苦手すぎる。

その会で食べさせてもらった「コサンバリ」というサラダのような料理がめちゃくちゃ美味しかった。帰ってからネットでレシピなど調べてみたけれど、食べたのと全然違う見た目である。今度レシピを教えてもらおう。

これはコサンバリとは全然関係ないカプチーノ伊勢うどん

月曜の朝は特別奇妙な夢を見た。夢というのは本人にとってはリアルな感情を引き出されるものだが、他人に話してもそこら辺は全く伝わらない。それでも話したくなってしまう不思議な魔力がある。

(夢)急な雨の中、私と夫は創業100年を越える銭湯にたどり着いた。風格のある立派な木造建てだ。しかし入ってみると客もいなければ番台さんもいない。たたきから上がると正面には障子で区切られた部屋があり、部屋の前に左右に細長い廊下がのびている。廊下は先が見えないほど暗いのに、正面の障子からは眩しいほどの蛍光灯の明かりが漏れている。不気味だ。すみませーんといいながら障子を引くとやはり誰もいない。もういいや、と勝手にあがってしまった。

六畳ほどのその部屋にはビジネスホテルにあるような小さな冷蔵庫が一つ置いてあるきり。外から見るより狭い。夫がせっせと濡れた荷物を拭いている横で、私はどうしても冷蔵庫が気になった。そっと開けてみると、丸々太った鮮度抜群のスルメイカが入っているではないか。いけないとわかっていながら、肌身離さず持っている(という設定の)解剖道具を取り出して腹を開けてしまった。輸卵管にみっちり熟卵が詰まっている美しいメスだ。外套膜は透明感があり、色素胞がまだ動いている。ちゃんとしたカメラを持っていないことを悔やんだ。ねぇ、ほらすごいよ、このイカ・・・と言いながら振り返ると夫がいない。

急に我に返った。誰のものかもわからないイカの腹を勝手に開いてしまった。死体を持て余した殺人鬼のような気持ちで、どこかにイカを隠せないかとうろうろするが、押し入れも棚の一つも見当たらない。このイカがしまってあった冷蔵庫さえ消えてしまった。

ふと気づくと、湯の匂いがする。湿り気のある空気が障子の隙間からぬるぬると不快に入り込んでいた。夫は浴場に行ったのだ! 急に悟った。イカを部屋の隅に追いやり、その場で服を全部脱いで廊下へでると、左の方から女性らしき高い声がわいわいと聞こえてきたのでそちらへ向かう。急に視界がパッと開けて、私は浴場に立っていた。

カランを使っているのはみな高校の同級生だ。修学旅行のようだ。Oが私に気付いて手招きしている。近寄るなり「スクワットしてみなよそこで」と意地の悪い顔つきで言う(本物のOはまったく意地悪ではないから、そんな顔は初めて見た)。私は「最高のスクワットをしてやる」と意気込んで、完璧なフォームでスクワットを繰り返した。素っ裸で。Oは私の扱いに困っているようだった。私も止め時がわからず気まずくなってきて、夫に助けを求める気持ちで振り返る、ところで目が覚めた。(夢終わり)

つまらんとわかっていても、自分で書いている分には面白い。恐ろしい夢は書かないように注意している。書くために記憶を反芻していると嫌な気分が定着する。

さて、昨日は歯医者の定期健診だった。歯を褒められることがわかっているので気分が良かった。いつもは電車を使って15分ほどかけて行くのだけれど、なんとなく徒歩で行ってみた。google mapによれば21分かかりますとのことだったが、17分で着いた。私は基本的にいつも競歩のスピードで歩いている。

診察券を忘れたことに気付いて受付の人に告げると、「ちょうどよかった!」と言いながら奥に引っ込んでいった。診察券忘れがちょうどよいことなんてあるのか? 戻ってきた受付のお姉さんが言うことには、診察券がアプリになったらしい。なるほどね。私のように持ち物の管理ができない人間にはありがたい。

予想通り歯をべた褒めされ、いい気分のまま帰路についた。帰りももちろん徒歩だ。歩くと思考がなめらかに流れる気がする。そのままの勢いで家でもエアロバイクを漕いだ。漕ぎながら「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」を観終わってすっきり。日ごろからもっと運動しよう。