CALAMARI CALAMATTE

佐野まいけるの日記

20240914:ナタデココ・アオリイカ

朝は病院。整理券をもらって開院までの間、喫茶店で待つことにした。カフェインレスのミルク珈琲の無糖を注文すると、会計の後にっこり笑顔で「シロップはお付けしますか?」と聞かれた。0.2秒の逡巡ののち、「つけてください」と答えてしまった。わざわざ無糖を頼んだのに。あまりに店員さんが爽やかで温かな笑顔と声色で言うものだから乗せられてしまった。スキンヘッドの中年男性で、ホテルマンのような品の良さがあった。あの笑顔で勧められたらおかしな壺でも買ってしまいかねない。結局つけてもらったシロップを半分くらい入れて、微糖のミルク珈琲を飲んだ。

病院後は夫と待ち合わせて武蔵境へ。大学の最寄りが武蔵境だったのだが、あまりに辛い時期だったからか記憶がおぼろげだ。でもまあ降りてみれば思い出すだろうと思ったら、これがまったくダメ。ここは本当に武蔵境なのか。改札を出る前からもう記憶と違う。私の記憶は幻なのか。恐る恐る調べると、しばらく前に駅舎や周辺の大きな開発があったらしい。よかった。

夫が行きたいという油そば発祥の店は駅から徒歩15分以上かかり、汗だくで店の前に到着。更に15分ほど並んで店内へ入れた。出されたお冷を一気に流し込む。お冷は本来セルフサービスのようだが、減るたびに店員さんが注いでくれた。店内を観察していると、まもなく油そば大とチャーハン大が運ばれてきた。油そばにはなるとが2枚と小さめのチャーシューが2枚。二人用にしてありますと店員さんが言う。取り分け時に喧嘩にならないようにということだろう。ホスピタリティ! 油そばはシンプルな構成でありながら、酢とラー油を足していくと病みつきになる。そして油そばより感動したのはチャーハン。しっとりパラパラ 、塩と油の加減も良く、勿論なると入り、少し大きめに切られたモモチャーシューが固めなので結果的によく噛むことになり、じっくりチャーハン全体を味わえる。チャーハン界の王だよ。というような感想を夫と交換しあって、必ずまた来ようと約束した。

駅への帰り道は線路沿いの日陰を歩いた。行きもこちらを歩くべきだった。駅の反対側のバスロータリーへ行ってみたら、記憶と重なる景色があって少し安心。ここからバスへ乗って味スタ方面へ行けば母校だ。暗い思い出を上書きするためにいつか夫と行きたい。

吉祥寺に移動してユザワヤでふわふわの生地を買った。これでふわふわのイカ解剖ぬいぐるみを作るんだ。それから以前吉祥寺で見つけてココは行かねばとメモしておいた居酒屋へ。イカの食べ比べができるという店だ。しかし、事前に食べログなどで調査した結果、多分そんなに良くはなさそう……。一抹の不安を感じながらも暖簾をくぐると、客は寂しそうに呑むおじさん1人のみ。まあ真昼間だしね今。微妙に入りづらい掘りごたつに無理やり脚をねじこむと、元気の良い店員さんが注文を取ってくれた。イカの刺身食べ比べ5種、イカ水晶、イカの軟骨唐揚げを注文。酒はガブガブ飲めるようにそば茶ハイ。どれもなかなか良いお値段。

イカ水晶、軟骨唐揚げと来て、いよいよお待ちかねのイカ食べ比べ5種がカウンターの向こうから差し出された。スルメイカ、ヤリイカ、アオリイカ、モンゴウイカ、タルイカ。どれも白く濁った様子だが、これは想定内。これだけの種類を同時に出すには冷凍保存が必須なので、透けたイカを期待する方がおかしい。イカは冷凍しても美味しいしね。

スルメイカ、ふむふむ。ヤリイカ、ふむふむ。続いてアオリイカを口へ運んで、驚いた。味がないのだ。噛み締めても噛み締めても無味。遠くにイカの風味があるようなないような。そのくせ薄皮の主張が激しく、これはまさにナタデココ。イカの食感をナタデココのようだと言う人のことを不思議に思っていたが、このイカに限って言えばその通りだ。アオリイカといえばイカの王様である。何をどうしたって美味しいイカのはずなのだ。それをここまで無味にしてしまえる技術がもはや気になる。洗濯機にかけたの?

残りのモンゴウイカとタルイカも、イカ水晶、軟骨唐揚げも特筆すべき点はなく、失意のうちにイカタイム終了。夫も渋い顔をしている。他人に勧める前で良かった。

気分を切り替え、桜上水のはちみせへ。夫も本当は来るはずだったが、疲れたとのことで吉祥寺でさよなら。前に来た時は駅からずいぶん歩いたような気がして、スタスタ適当に歩いていたら800mくらい通り過ぎてしまった。店内は盛況。土屋さんとヨヨさんに挨拶し、自分が寄稿した本を献本という形で頂いた。保存用にもう一冊と、ふし日記(改)と、「存在しない」ステッカーを購入。奇遇なことにせこなおさんと遭遇し、帰り道は息子さん含め3人でおしゃべりしながら帰った。